蘇州・太湖の晩秋ドライブルート:秋の趣と味わいに出会う

「太湖よ太湖、お前はなんと美しいのか。太湖の水には美がある。水面には白帆浮かび、水下には赤菱が生えている。水辺の葦は青く、水底には肥えた魚やエビが潜んでいる」。優しく響き渡る『太湖美』の歌声は、太湖のたおやかな風光と豊かな物産を語り尽くしている。太湖の眺めは四季折々だが、晩秋の太湖は美についてことさら生き生きと説明している。これから紹介する晩秋の太湖の風景路線は、特にドライブ好きな方々にお勧めだ。秋の光を追って出発し、湖と山の間で季節限定のロマンに出会おう。

「千里の江山 寒色に暮れ、蘆花深き處 孤舟を泊める」(遥かなる山河を秋の色が覆う。深く茂る蘆の花のなか、ぽつんと船を泊める)。李煜が描いた秋のイメージが、まさに今、太湖湖浜国家湿地公園で完璧に再現されている。都市の目と鼻の先に距離にありながら自然の懐に深く抱かれたこの湿地は、晚秋のなかで偽らない想いを語り、清らかな秋の夢をゆったりと楽しむにうってつけの場所だ。広大な太湖の畔では、秋風に揺られるハギの花が穏やかで美しい姿を見せ、湖の畔の湿地に広がる美しい長絵巻を描き出している。縦横無尽に交差する水路では、魚の群れが澄み切った水底を自由自在に泳いでいる。広々とした干潟では水鳥が羽ばたき、生き生きとした生態景観を生み出している。近くに目をやると、まるでふわふわとしたガチョウの羽のように柔らかい蘆が広がり、遠くを望めば、葦原が波打つ雪原のように連なり起伏している。きらめく湖水は波をたたえ、コバルトブルーの空と紺碧の水が継ぎ目なく一体となっている。その眺めに人は思わず「秋水、長天と共に一色」(秋の水と広大な空が交わりひとつになっている)と心から感嘆してしまう。

蘇州の名刹古寺は数多いが、光福鎮蟠螭山に建つ石壁永慧禅寺は観光客にはほとんど知られていない。ここは古く幽邃な仏門の秘境だ。光福鎮の環太湖大道から石壁嘴へと曲がり、うねうねとした山道に沿って登って行く。途中、湖を望む東屋を通り過ぎ、さらに右へと曲がって一段一段と登る。「佛」の字が刻まれた照壁を見上げるころには、禅寺の山門に到達している。石壁寺は辺鄙なところにあるが、文人墨客に愛され、昔から「光福に遊びて石壁に到らざれば乃ち憾事なり」と言われてきた。文人や風流人はここに石刻の題詠を残すことを誉れとした。名高い蟠螭山の岸壁には、呉栄光、潘鍾瑞、顧文彬、章太炎、そして弘一法師、南懐瑾などの名士が残した詞や歌が約30点刻まれており、その行間には沈殿した歳月が醸し出す味わいが感じられる。

「湖光山色、洞天福地」と称される光福鎮には、非常に美しい太湖の山水だけでなく、思わず垂涎のご当地グルメも隠れている。光福漁港村の「十八澆麺」は昔から蘇州のグルメ界隈で名声を轟かせている。その名こそ「十八澆」だが、店が用意している「澆」(麺にかけるトッピング)は十八種類をはるかに超える。新鮮な剥きエビ、ピリ辛のチンジャオロース、食感滑らかな洋葱鱚絲(玉ねぎと千切りタウナギの炒め物)、甘酸っぱい糖醋小排(スペアリブ)、十分に味が沁みた紅焼小腸(豚の腸の醤油炒め煮込む)、美味しい銀魚炒蛋(シラウオと卵の炒め物)、芳醇な味わいの老焼魚(アオウオの味噌煮込み)、サクッと揚げたエツを甘酢あんで仕上げた糖醋鳳尾魚など、ないものはない。しかもトッピングは季節や時期に合わせて絶えず更新されるので、どの味わいも新鮮だ。

蘇州の秋は魅力的だが、とても短い。そんな秋のしっぽを捕まえに車を走らせて太湖の湖畔へ足を運ぼう。湖と山の景色のなか、晩秋の風景を心行くまで眺め、市井の活気のなか地元の秋の味を探し求め、この季節だけの素晴らしい風物を大切にしよう。