この「春山在望」という名には、春の山で暮らす色鮮やかなイメージが自然と息づいている。まるで山を満たす春の雰囲気が凝縮されているかのようだ。かつてはクスノキや青竹があちらこちらで枝を伸ばしていたこの土地は現在、謝柯の手により宜興の喧騒のなかの浄土となっている。林のなかには茶園が整備され、はつらつと枝葉を伸ばすサクラ、スモモ、サンザシなどの植物の生気に満ちている。
建物は白と黒を主な基調としている。青いレンガと白壁が竹に映え、自然が作る光や影が緑と交わっている。その様子はまるで生き生きと描かれた水墨画のようだ。竹林に静座すれば、外界の騒がしさはすべて消え去り、広がるのは物静かな風景と心を癒す竹の音だけだ。
レストランに足を運ぶと、床に敷かれた黒石がかすかな光を浮かべ、窓の木枠が自然を切り取って絵巻物を描き出している。貸し切りの個室は彫像、紙製ランプ、藤椅子などの要素が巧みに融合され、味わい満点だ。茶畑に面している茶室には文人の雰囲気が濃厚に漂っている。自家製の春茶を手に茶畑を眺め、綻ぶ花を愛で、セミの声に耳を傾ければ、自然の趣のすべてが楽しめること間違いなしだ。
春山在望ではそれぞれの部屋に独立した中庭が設けられている。クスノキに囲まれた庭もあれば、竹林と引き立てあう庭もある。山間の松の枝や竹の葉は自由に採取可能なので、素朴な漆器や土壺などの器物の素材にしてもいいだろう。異国情緒もあれば地元の風物に隠れる気楽さも感じられる、そんな場所だ。